注目の自治体!みやま市が出資した電力会社「みやまスマートエネルギー株式会社」~2016年1月14日

【視察の目的】
 福岡県みやま市は、昨年電力会社を設立しました。高圧の公共施設への供給し、今年度2016年度4月からは自治体として初めて低圧(家庭)への供給も始めます。全国的には電力自由化で国の政策に翻弄されている太陽光発電所や市民が設立した発電所、再生可能エネルギーに力を入れる小売の電力会社が出てきている中、自治体としてどのように取り組んでいるかを調査しました。

【みやま市の概要】
 福岡県みやま市は、2007年(平成19年)1月29日に瀬高町、山川待ち、高田町の3町が合併した自治体。コンセプトは「人・水・緑が光り輝き夢ふくらむまち」。
東部に御牧山、清水山などの山々が連なり、西部には有明海の干拓によって開かれた広大な低地が広がり、森林面積19%、耕地比率は45%という田園都市です。市の北東から南西へ向けて一級河川の矢部川が流れ、この矢部川を中心に、支流である飯江川や大根川などの河川は地域内を流れています。みかん・ナス・セロリ・たかなや海苔の産地です。
面積  105.21㎢(東西14.3㎞、南北12.5㎞)
人口  39,357人(男性 18,419人、女性 20,938人)
世帯数 14,138戸

【みやま市の再生可能エネルギー政策】
 みやま市の取り組むエネルギー政策について、みやまスマートエネルギー株式会社磯部社長から説明を受けました。
●再生可能エネルギーへの取り組み経緯
エネルギーの調達を半分以上海外から輸入している日本、全体で20兆円電力規模がある中、10兆円の半分が海外から輸入。またその8割をサウジアラビアら中東から調達しています。みやま市に置き換えてみると20億円の市場になると計算もしています。みやま市の特長である豊かな日射量に恵まれた土地を活かすことに注目しました。
そもそもみやま市では、5年前に市が中心となり5MWの太陽光発電所を建設していました。43団体(企業、市民)が参加してつくられた発電所です。また電気自動車導入や学校現場への環境学習、住宅用太陽光発電設置を促進してきました。
 環境学習は、学校から依頼があり出向きましたが、子どもが保護者に伝えるという効果をあらためて認識したそうです。
 住宅への設置促進は、2010年(平成22年)4月から環境負荷の少ない循環型社会を構築するため住宅用太陽光発電システムを設置する家庭に対し、補助金の交付を始めました。(1kあたり3万円で最大12万円まで市が応援)
現在みやま市の1000世帯に設置/約14000世帯(約7%)。
2013年度末(平成25年度末)都道府県別太陽光発電システム普及率は、導入件数/一戸建て件数について、全国平均5.6%、福岡県7.7%、みやま市1000世帯/11277世帯=8.9%。みやま市は全国トップクラスの普及率です。

 また住宅への太陽光パネルの設置は、全国平均3.7kWといわれていますが、みやま市の屋根をみると6~7kW設置ができる可能性があることに注目。仮に家庭で使用する電気の余剰を売電すると仮定で計算した場合、3kW×1000世帯でメガ級の電力を生み出す設備となります。みやま市では、再生可能エネルギー活用可能性が大きく広がると考え、調査を実施。その結果、賦存量(活用が期待できる量)、利用可能量(条件を考慮した利用可能量)から大きな数字の可能性を見出しました。エネルギーの地産地消ができるのです。
 現在みやま市には再生可能エネルギーが35MWあります。磯部社長は、いずれ100%再生可能エネルギーにしたいと発言していた言葉が頼もしく思いました。自営線だって視野にいれる幅の広さ、民間の第一線で活躍されてきていた社長だからこそ柔軟な発想ができるのか~と感服しました。

●「大規模HEMS情報基盤整備事業」
 高齢化と人口減少は、みやま市にとっても最大の課題です。また2014年7月、みやま市は経済産業省の「大規模HEMS情報基盤整備事業」に採択され、参加しています。2年間の事業。全国に自治体として唯一選ばれました。

 それは・・・
みやま市が課題として抱える
①少子高齢化が進む中で独居老人世帯の増加と人口減少、過疎化現象が表明化
②若者定住、子育て支援の施策要求。「住み続けられる街」の願い
③産業の振興。とりわけ農林業の振興
⇒経済的自律、地域雇用の創出、安定した定住化を解決する一つとして、自治体による公共エネルギーサービスを考案しました。

 国の補助金でHEMSを分電盤に設置して電力を測定しました。補助金でみやま市の2000世帯にHEMSを取り付けることができました。
 さらにHEMS普及拡大のために、2000世帯のモニター以外にも市のHEMS補助金によって取り組みを拡大しました。そしてHEMS設置世帯への電気料金補助金(1/2助成、上限5000円)も実施しています。

●人・まち・仕事の総合戦略の一つとして電力を小売りする電力会社を、みやま市、筑邦銀行、九州スマートコミュニティの3社でみやまスマートエネルギー株式会社を2015年3月25日に設立しました。自治体が大手電力会社に頼らない地産地消の自治体主体となる再生可能エネルギーを評価され「2015年グッドデザイン賞金賞」を受賞しました。

【事業の目的】
1.地域課題の解決    地域課題を市民の創造力で解決する
2.エネルギーの地産地消 エネルギーセキュリティーと地域経済活性化 

【電源構成】
再エネ率は50%近く。太陽光依存度が高いと、回避可能原価の市場連動など、制度変更が経営リスクになる。夜間のバックアップとして常時バックアップは九州電力。ベース電源は中国電力。

【出資構成と役割】資本金2000万円
*資本金は人件費、家賃に当てられている。
*銀行が出資に加わったのは、電気の仕入れ等につなぎ融資が必要。
*現在市と企業と銀行の3者が出資しているが、いずれは市民にも出資に参加してもらいたいと考えています。

現在の出資比率:
みやま市 55%
 ・公共エネルギーサービスのしくみ構築を先導
 ・収集された情報やサービスのノウハウを蓄積・分析し、市のエネルギー政策に反映
 ・本事業の取組みを広報を通じて広く知らしめ、市民への啓蒙や他の自治体へ情報発信
筑邦銀行 5%
 ・資金面、事業管理面で事業運営を支援
 ・地方銀行として公共的使命を持って豊かな地域社会づくりをバックアップ
 ・金融サービスや情報提供機能の向上・充実を図ることで経営の効率化、健全化をバックアップ
九州スマートコミュニティ 40%
 ・発電化獲得営業、需要家獲得営業、顧客管理支援
 ・地域コミュニティの形成につながる企画提案

 みやま市が55%を出資し、筆頭株主として事業運営を主導します。残りは、九州スマートコミュニティが40%、筑邦銀行が5%を出資する。2015年度は、公共施設や市内民間企業に対して電力を販売し、1.4億円の売り上げを見込みます。
2016年の電力小売り全面自由化後には、家庭向けなど低圧需要家にも電力を販売するとともに、固定価格買取制度(FIT)による太陽光の余剰電力の買い取りにも乗り出します。プレミアム価格として、+1円上乗せで購入します。2018年には14億円まで販売を拡大する計画です。電力販売と市民への生活支援サービスをセットに提供する「スマートコミュニティ」を実践的に展開します。セットにする生活支援サービスには、高齢者見守りサービスや家事代行サービスなどを自治体の情報を生かす予定です。

 現在15名のスタッフで運営をしていますが、3年後には25名にしたいと!自治体との連携でサービスを担う雇用も創出すると考えています。

【みやま市が電力会社を設立した理由】
①市内で生まれたエネルギーを市内で使う(エネルギーの地産地消)
⇒輸入に頼らない自給自足
②市内で雇用を増やし経済を活性化(経済的自立)⇒高齢者にも働く機会を
③しあわせの見えるまちづくり(進化し続けるまち)
⇒みやまに住んでいて良かったと思うサービスの充実

●質問しました!
【Q&A】
Q1.余剰買電でプレミアム価格として1kWhあたり1円高く(+1円つけて)購入するが、どのようにねん出するのか?
A1.みやまスマートエネルギーの経費を押さえてねん出する。

Q2.激変緩和措置期間終了後、卸売市場からの購入が再生可能エネルギーは仕入れ価格が高くなると言われるが、それでも購入するのか?
A2.高くても購入する。

Q3.中之条町等、ご当地電力と連携するのか?
A3.連携しない。みやま市以外のご当地電力は民間主導で運営している。みやま市は自治体主導で連携して運営している。

Q4.ベース電源の中国電力から購入している電源は?
A4.火力発電

Q5.国の方針では、電源構成は明らかにしなくていいが、みやまスマートエネルギーの考えは?
A5.電源構成は明らかにする。

Q6.再生可能エネルギーの発電所を作っていく考えは?
A6.電源構成を再生可能エネルギー100%にしたい。小水力等の発電所も作っていきたい。

Q7.首都圏の自治体にもみやまスマートエネルギーのノウハウを教えてくれるか?
A7.隠すことはない。みやまスマートエネルギーのもつ電力オペレーションシステムは既存のシステムのクラウドを利用している。他の自治体で使用するならば初期投資も軽減できる。やる気がある自治体には協力したい。

Q8.みやま市議会でみやまスマートエネルギー一社のみの公共施設への電力契約が問題にはならなかったか?
A8.みやま市が出資している会社なので問題にならない。随意契約をしている。

Q9.家庭への販売は競争会社が多数あるが、そのあたりどう捉えているか?
A9.価格競争ではなく、今までのHEMSのモニターで省エネ啓発などもしてきている。自治体との連携で多様なサービスができると思っている。

Q10.近隣自治体との連携は具体的に進んでいるか?
A10.現在近隣自治体とは2年間の調査で協力いただいている。連携はこれから。具体的にはまだ進んでいない。普通に顧客管理オペレーションシステムを構築するならば初期投資に2億円かかるが、自治体間が連携すれば軽減できる。また再生可能エネルギーの面的拡大もできると考えている。