自然エネルギー100%(水力発電)の屋久島~発送配電分離を導入の町

 現在政府は「ベース電源が原発」という、とんでもない「エネルギー基本計画素案」のパブコメが募集されています。6日が締切です。おおぜいで反対の声を出しましょう。パブコメはこちらから提出できます。http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=620213015&Mode=0

 発・送・配電事業を分離している、豊かな島の河川を活かした水力発電によるクリーンな自然エネルギー100%の屋久島へ昨年暮れに行ってきました。(2013年12月19日~22日)今こそ!エネルギーをクリーンな自然エネルギーで地産地消する仕組みが必要です。屋久島の事例を国は参考にすべきではないでしょうか。

 炭化ケイ素粉末のダイヤシックを主力商品とする屋久島電工(株)の自社の水力発電所(千尋滝、安房川第一、第二)の総発電は、58,500kWです。その余剰電力である約2割を屋久島電工(株)と密接に関係がある「特定供給」として、屋久島全域の各集落ごとに九州電力、屋久町(「屋久町電気施設協同組合」)「安房電気利用組合」「種子屋久農協」が供給しています。

▼屋久島の電源開発~郷土史を紐解けば・・・
 戦前は窒素肥料工場計画のための電源確保のための発電所や「県営・民業方針」のもとの軽金属工業計画のための鹿児島県営発電所計画等、さまざまな電源開発の計画がされましたが、実現しませんでした。戦後は電気製鉄事業計画や電気製塩事業計画、さらには九州への海底送電計画等、華々しい電気利用計画が打ち出され「重工業の島」と宣伝されるに至りました。しかし「水主火従」から「火主水従」への電源開発方式変容、また「大火力時代」へと変容する中、戦後の屋久島の電源開発計画は頓挫しました。

屋久島電工(株)地下270メートルの安房川第二発電所

安房川第三発電所の計画は中座

 さてただ一つ屋久島水力電気(大正13年設立)が、島の永田、一奏、吉田の地区において、大正15年5月に嶽野川発電所を開始しました。嶽野川から導水による水路式発電所(150キロワット)の運転で、3地区に送電され、各家庭に電燈が灯されました。一奏にはサバ漁のための製氷工場に供給されました。
 そもそもこの地区はカツオ漁が盛んで、血抜きのための水を使い、「計屋(はかりや)」家が当時大阪の堺市へ売りにいき、その儲けで今でいう社会貢献として、島に橋を作り、会社を作り、電気も通しました。因みに3地区の人たちの集落では、浄瑠璃等の大阪の文化も入り、戦後ラジオも聴いていました。一方島の他の地区の人たちは、ランプでの生活でした。
 嶽野川発電所の大正時代のフランシス型の水力発電が88年経った今も稼働しています。保守の点においても、水力発電は優れものです。

*歴史的な流れをチェック!国の動きと屋久島水力電気の嶽野川発電所の動向は・・・
昭和13年 「国家総動員法」「電力国家管理法」の制定
昭和14年 全国の発送電事業を一元管理する日本発送電株式会社が設立
昭和16年 水力発電設備すべてを日本発送電に総合
昭和17年 国家総動員法に基づく「配電統制令」が実施され、発・送・配電を一貫する電力国家管理体制が完成。九州では発送電事業が日本発送電に統合され、配電事業については、九州配電株式会社を設立。
昭和18年 屋久島水力電気は九州配電に統合された
昭和21年 「配電統制令」が廃止
昭和23年 日本発送電、九州配電の会社が「過度経済力集中排除法」の適用
昭和25年 「電気事業再編成令」「公益事業令」
昭和26年 日本発送電、九州配電の会社が解散し、現行の九電力会社体制確立
      嶽野川発電所は九州電力へ

導水管の先は、大正15年から稼働するフランシス水車のある九州電力嶽野川発電所

▼上屋久町の電気事業
 九州電力嶽野川発電所の供給区域外の志戸子以東を含む上屋久町全域へ供給されるのは、第二次大戦後の村営発電事業の宮之浦発電所により、昭和31年に屋久島北部地域全域に送電されました。
 一方昭和27年に屋久島電気興業(昭和33年屋久島電工と改称)設立され、千尋滝発電所、安房川第一発電所の運転を開始し、配電線の工事を終え、昭和38年に村営の発電所から屋久島電工へ受電を切り替え、村営宮之浦発電所を閉鎖しました。
 以上のような経過を経て、永田、一奏、吉田の地区は九州電力から、志戸子以東の6地区は上屋久町を通じて屋久島電工から「特定供給」という形で電力供給体制が出来上がりました。また九州電力嶽野川発電所だけでは3地区の電力を賄えず、現在九州電力は屋久島電力から供給を受けています。

*志戸子以東の6地区は上屋久町の役場に電気工事士を設置し、電気供給を開始
昭和36年 上屋久町の電気事業の制度が整備「上屋久町町営自家用電気事業供給条例」公布
昭和39年 「公益事業令」が廃止、「電気事業法」が公布
昭和43年 「上屋久電気供給条例」施行
 

▼上屋久町と屋久町の合併後(平成19年(2007年))
平成19年 「屋久島電気事業供給条例」を施行http://www.yakushima-town.jp/d1w_reiki/419901010227000000MH/419901010227000000MH/419901010227000000MH.html
屋久島町が運営する公営事業の電気事業は、3000万円の黒字事業です。その黒字を一般会計へ入れることで国保税に補てんされ、国保が赤字にならなかったそうです

知れば知るほど疑問点もわきます。
「種子屋久農業協同組合、安房電気利用組合は、黒字部分はどのように組合員に分配されているか」、「なぜ農協、電気利用組合という分け方をしたのか」、「町と屋久町電気施設協同組合との関係」、「そもそもどのような法のもと農協や電気利用組合、協同組合が各家庭への電気を供給できるのか」まだまだ不明な点があります。引き続き調査をしたいと思います。

 さて電気料金については、地域ごとにわかれている為、電気料金も微妙に違いました。そこで町では、リミッター制を導入し、3つの組合の電気料金を近づけました。
安房電気利用組合では、基本料金400円。使用料金1kwhあたり21.5円でした。リミッター制を導入し、新しい基本料金は、屋久町、安房、種子屋久農協の集落地域で10アンペア270円刻みになりました。但し安房、種子屋久農協では、1kwhあたり、120kwhまで17.9円、280kwhまで21.4円、それ以上だと22.9円となり、屋久町では 120kwhまで15.3円、280kwhまで21.4円、それ以上だと23.5円となりました。九州電力では、10アンペア283.5円刻みにな、1kwhあたり120kwhまで16.65円、300kwhまで22円、それ以上だと24.86円です。
 電力の自由化で料金について、どのように考えるかも今後の課題であることが見えてきました。

▼各集落ごとの配電事業から
 離島がゆえに必然的に配電事業も自分たちで作り出してきた屋久島は、いまやクリーンなエネルギーを地産地消する先進事例です。平成19年に制定された屋久島憲章前文は、みんなで実践すべきものだとあらためて実感しました。

7200年の縄文杉とともに!

屋久島憲章前文(抜粋)
「地球と人類の宝物である屋久島。  この島は、周囲132km、面積503㎢の日本で5番目に大きい島である。   屋久杉を象徴とする森厳な大自然に抱かれ、神々に頭をたれ、流れに身を浄め大海の恵みに日々を委ねて人々が生きた島。   この島は、はるかな昔から人々の魂を揺さぶりつづけ、近世森林の保全と活用で人々が苦しみ葛藤した島である。そして今、物質文明の荒波をようように免れた屋久島は、その存在そのものが人間に対する啓示であり、地球的テーマそのものである。この島に住む私たちは、この屋久島の価値と役割を正しくとらえ、自らの信念と生きざまによって、この島の自然と歴史に立脚した確かな歩を始める。そのため、この島の自然と環境を私たちの基本的資産として、この資産の価値を高めながら、うまく活用して生活の総合的な活動の範囲を拡大し、水準を引き上げていくことを原則としたい。この原則は、行政機関はもちろん、屋久島に係わる全ての人々が守るべき原則でありたい。」