シンポジウムでの古川康佐賀県知事の「新しい時代を生きる」という基調講演は、実例を用いて、地域主権とは何かを考えさせられました。
【エピソード】
あなたは河川管理を担当する部署にいる。ある日、あなたの机の電話が鳴った。「市内の多布施川の川沿いの暴力団の事務所を構えている。その敷地は法律上河川敷になっていて、県が貸しているのではないか。問題ではないか。」事実関係はそのようだ。占有許可という形で許可している。ところが、河川法には、暴力団だからという理由で占有許可を取り消せるとは書いていない。
あなたならどうする?
古川知事は、会場に投げかけます。「上司に相談する」「国交省が駄目というから、法律的にどうしようもできない」「感情的に暴力団は占有できないと思うが、どうしたらいいかわからない」etc
実際に佐賀県では、この問題について、県民の電話からまる1年かかって知事に知らされました。担当者も法律では予定されていないから何もできないとどうしようかと悩んでいるうち、ほかの業務の繁忙さから、処理が後回しにされていた。知事は、この国の対応などについて、「馬鹿じゃないか。世の中には法律だけで動いているわけでない。なぜ知事や副知事に相談しなかったか」と一言、知事の責任のもと、占有許可を更新しない措置がとられました。
このときのポイントは、
①法律上根拠がないからできないのではない。コンプライアンスは決まりを守ることではない。真のコンプライアンスは、県民の期待に応えること。
②住民がが発見して1年ほったらかし。住民の通報に管理職が思いをはせなかった。社会の要請に応えること。
古川知事の「地域主権は”金”をくれではない、自分たち自治体に責任をとらせてくれだ」という言葉に説得力があります。国交省の河川敷の問題から見えてくるのは、国交省の役人も責任を取りたくなかったということ。
事件は現場で起こっている。国が想定していないことも生活の現場では多々起こっています。そのとき、誰かの判断を待つのではなく、自治体自らが自分たちで考え、気づいて、行動をしていくことではないでしょうか。
古川知事は会場の自治体職員に投げかけます。「首長は3期や4期くらいしかしない、また政策について責任もとる。職員は、40年も継続して実務をする。失敗しても首にならない。なぜ失敗をおそれるのか。」
そういえば、会場で日野市や八王子市の職員と出会いました。自治体職員有志の会のさらなる活動に期待したい。