2007年4月20日小児科を守る会が発足したのは、県立柏原病院の小児科医2名のうち1名が院長に就任し、実動のお医者さんが1名になり、その医者も過酷な労働から5月末には辞めるということに直面したことからです。
お母さんたちは、はじめ「そんなの困る」「なぜこんなことになったの?」「これからどうなる?」・・・という不安、不平などの声でした。その中、子どものぜんそく発作で小児科で夜間緊急受信し、小児科医の過酷な労働を目の当たりにしました。
◆小児科を守る会の話より
夜間救急は、すでに30人ほど順番を待ち、深夜2時受診し、明け方4時入院病棟へ。明るくなり目を覚ますと、ベッドの傍らに「処置しておきました」と小児科医からの置手紙。その日も普段どおりに診療をこなす医師をみたとき「先生寝てないんだ」ということに気づいた。
「子どもの病気のことを考えたら柏原病院がなくなるのは困る。でも先生のあんな姿をみたら、『辞めんといて』とは、よういわん」
当直明け36時間労働、外来・入院・救急・緊急手術の危険な綱渡り、患者の無理解によるコンビニ受信・・・住民側にも責任があると思いました。小児科医の派遣要請とともに「私たちもコンビニ受信を控えます」と地域で署名活動をしました。
署名は、県庁へ提出されたもの、行政サイドからは、「丹波よりも困っている地域はある」「何かするにも来年度からでないと無理」・・と。この時の体験が、行政を頼るだけでなく、自らが行動し、医師が働きやすい環境を作って行こうと運動を展開しました。
3つのスローガンを掲げ、地域で資金を集め、訴えます。
①コンビニ受診を控えよう
*コンビニ受診とは、軽症にもかかわらず重症者のための夜間二次救急を自己都合で受診すること。
②かかりつけ医をもとう
③お医者さんに感謝の気持ちを伝えよう
スローガンの③を掲げたことに、当たり前なことなのに、忘れてしまっていることに気付かされました。「ありがとう」という気持ちは、声にしないと相手に伝わらないものです。病院の小児科の窓口には、「ありがとう」メッセージがいっぱいありました。守る会の講演会でも参加者にお医者さんへのありがとうメッセージをかいてもらい、会がメッセージをお医者さんへ届けます。もらったお医者さんも仕事の原動力となります。
守る会の活動は、どんどん展開します。ありがとうメッセージは、小児科以外にも広がっています。ママのおしゃべり救急箱(通称:ママ救)を開催。地域の子育て世代へ、情報を届けます。質問で答えられないことは、病院の医師に相談し、メルマガを通じて返します。子育てに役立つ資料を用意し、必要なものを資料バイキング(ネーミングはさすが!)します。
病院は、若い医師確保のための研修で守る会の人たちと交流会を設定します。
また守る会は、患者がコンビニ受診をしないために、病院監修のもと、子どもが病気にかかったときの症状をフローチャートにし、すぐに病院にかかるべきか判断基準となるものを冊子にしました。丹波市は、冊子を買い取り、乳幼児の家庭へ全戸配布します。その冊子は、全国のどこの地域で使えるようなバージョンも作成し、販売展開しています。
現在小児科医は5人確保できました。また丹波市、柏原病院も地域住民との連携を深めています。入院患者も増え、住民の信頼を取り戻すことができています。
守る会代表の丹生さんの住民ができることはあります。それをやっているだけ、(行政や病院のヒモつきでない団体だからこそ)やめたいときにいつでもやめます(笑)くったくのない笑顔に、当事者から課題をみつけ、解決する地域の底力をみました。
さて守る会丹生さんから、東京都の都立病院の統廃合について質問を受けました。テレビで都立梅ヶ丘、八王子、清瀬が閉鎖され、都立府中へ小児科が統合されることが放映されていたとき疑問に思ったそうです。なぜ近隣地域住民は反対をするのか?距離の問題か。
何が課題で、解決するにはどうのようにすべきか。住民ができること、病院ができること、行政ができることを本音で語り合うべきではないだろうか。地域医療を守るため、私たち一人ひとりは何ができるか。遠い丹波市のお母さんたちの取り組みを通じて、身近な都立病院統廃合の問題を考えさせられました。その都立府中の医療センターは、明日開設されます。