手をつけてはいけない領域まで踏み込んだニッポン!貧困の現場

NPO法人「もやい」事務局長 湯浅誠さんの講演会から

 6月25日の東京地裁判決で生活保護受給者の老齢加算廃止が憲法25条違反になるかについて、裁判所は合憲判決。
 また厚生労働省は、生活保護を受けている人に価格の安い後発医薬品(ジェネリック)を使わせるため、先発品を使い続ける場合は保護の停止を検討するよう、自治体へ通知。批判を受け撤回はしたものの、いったいこの国はどこに向かうのだろうか。
写真右、湯浅誠さんの現場をみてきている言葉がヒシヒシと迫ってきます。

 政府は「骨太の方針2006」で、5年間で社会保障費を1.1兆円(毎年2200億円)削減することを決めました。またしても小泉内閣時の産物です。その方針に従い、法律改正をせずして、手をつけてはいけない領域まで、厚生労働省は削減してきています。
 この小泉改革では、規制緩和を掲げていました。一見”規制緩和のひびき”は、よさそうですが、製造業への派遣労働はじめ、どんどん参入。その結果、正規雇用と非正規雇用を作ってきたのではないだろうか。派遣労働では、社会保障制度もなく、年収200万円以下での労働。家庭をもつことや未来への希望をもつことさえできないという人々が増えてきました。

 湯浅さんいわく、「以前貧困の境目は、労働市場と失業との間にあった。その境界線は、どんどん労働市場の中にまであがってきている。正規と非正規になり、そして今では正規雇用のなかにまで貧困のラインはあがってきている」

 「名ばかり店長」とか「名ばかり管理職」などマスコミでも取り上げられています。正規社員だが残業代はゼロ。店長以外すべてアルバイトや派遣社員。勝ち組ということばが流行ましたが、いったいだれが勝ち組なのだろうか。正規であって、必ずしも勝ち組とはいえない現状です。

 湯浅さんは、生活保護に関しては、国は基準額をあげるべきだといいます。また基礎自治体レベルにおいて、生活保護行政を当事者と担当職員だけでなく、第三者をいれるべきではにないかと提案。そして役所の担当職員の忙しさを例にあげ、行政の担当職員の待遇をしっかりして欲しいと。先輩のノウハウも引き継いで欲しいとも言っています。

 さて昭島市は、議会において、生活保護の申請用紙は窓口におくべきとある議員さんが訴えています。私もなぜ用紙を市民の手の届きやすいところへ置かないのか疑問でした。地方分権といわれながらも、昭島市は、政府の方針をそのまま受けて、行政事務を行なっているのだろうか。
 この問題、根本は、国政をなんとかせねばならない!と思う。ヨーロッパは、何かしらのどこかの社会保障制度で救われます。しかしそうでない日本では、まずは現場の貧困を目の当たりにする基礎自治体が、一つひとつ取りまねばならないとも思う。