安心して徘徊できる町・福岡県大牟田市~厚生文教委員会による視察の報告

 

絵本「いつだって心は生きている 大切なものを見つけよう」は、認知症ケア研究会(大牟田市介護サービス事業者協議会のメンバーによる手作り。

 認知症は、脳の障害から、物忘れや判断能力低下が起こる状態で、日常生活に支障をきたす病気で、ありふれた身近な病気です。65歳以上の6,7人に1人が認知症といわれる中、自治体としていかにどう支えるかは全国共通の問題です。

 大牟田市は、人口121,630人、高齢者数39,365人で、高齢化率は32.4%です。市の3人に1人が65歳以上です。また高齢者の1/3が単身高齢者という状況です。多職種協働・多世代交流・地域協働を生み出すことを柱に進める大牟田市の認知症ケアコミュニティ推進事業を視察してきました。
 
大牟田市の多職種協働・多世代交流・地域協働を生み出そう・・とは、地域の中で、人材を育てながら、地域ぐるみで認知症へ取り組む、何層にも連携をしている具体的な施策に驚きました!

○認知症コーディネータ―養成研修
 デンマークをモデルに、大牟田市独自で人材育成プログラムを作成し、事業所から派遣された5年以上の経験がある管理者クラスに対して、認知症コーディネーターを養成しています。受講期間は2年。受講費用は10万円。現在10期生85名が終了し、介護現場や家族、本人への支援を行っています。

 ○もの忘れ予防・相談検診
 
早期発見・早期対応のために、地域交流施設や商業施設等で年18回程度1次検診、年2回の保健所での2次検診を開催しています。また市内6か所では、介護予防教室「ほのぼの会」を毎年8月と12月に、3カ月にわたり実施しています。

そこを担当するのが大牟田市地域認知症サポートチーム!
6か所の地域包括支援センターを支援する機関として基幹的なサポートチームを平成23年10月から設置しています。
 実はこの役割が重要。運営主体がバラバラの地域包括支援センターがサポートチームのおかげで、横の連携が取れ、コミュニケーションが取れ、町ぐるみ、地域ぐるみで認知症のサポートをスムーズにできるのです。
【メンバー】
・専門医(精神科・内科:4名)
・認知症医療センター医師(神経内科:2名)
・介護・看護職(認知症コーディネーター:6名)
・認知症連携担当者(市長寿社会推進課:1名)
【役割】
・困難事例のスーパーバイズ
・かかりつけ医との医療連携
・認知症何でも相談窓口
・介護サービス事業者へのアドバイス・指導、連携
・事例検討会
・もの忘れ予防・相談検診、予防教室の結果解析
・予防教室・参加者のフォローアップ
・若年認知症本人交流会
介護家族交流会のコーディネート
・啓発活動、予防教室の活動立案、資源マップ

 ○小中学校での絵本教室~子どもも認知症のサポーター
 
子ども時から、認知症の人の気持ちや支援について学ぶため、小中学校での認知症の絵本の読み聞かせとグループワークをしています。

○高齢者等SOSネットワーク~徘徊模擬訓練
 
21か所の全小学校区に警察が事務局となり、市役所介護健康課、消防署、郵便局、タクシー協会、バス会社、JR、薬剤師会、ガス会社の隣近所、地域ぐるみで多職種協働で高齢者等SOSネットワークを構築しています。そのネットワークが毎年9月に、徘徊模擬訓練を実施しているのです。徘徊模擬訓練は、今年10回目の開催となります。認知症になっても安心して暮らせるために「徘徊=ノー」ではなく、「安心して徘徊できる町」目指しています。また現在県南筑後地域の各自治体において、SOSネットワークの協定書を締結し、広域連携の構築をしています。

 大牟田市での視察でさらに驚いたのは、小規模多機能型居宅介護事業所が24か所もあることです。そしてその横には介護予防拠点となる「地域交流施設」が作られています。地域交流施設には、市が育成する認知症コーディネーターを配置しているのです。場の提供だけでは不十分!人と人を結ぶことが必要という市の考え方は、当たり前のことですが、それを実践している大牟田市に感服しました。

 かつて炭鉱のまち大牟田市が、今、人にやさしいまちとなっている事例は、昭島市としても参考にすべき政策ではないでしょうか。

 昭島市へも視察を活かした認知症施策を6月議会で取り上げます。